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グラン王国では、奴隷を強く禁止している。
それは、上流貴族の治める領地も適用され、王国軍の視察団が定期的に見回りに来ていた。
王国の定める規則は、それが誰であろうと破る事は出来ない。
特に、人々の上に立つ上流貴族が破った時には、称号は剥奪され、一族全てが歴史から消されるのだ。
中には、それを良しとはしない者も確かに存在している。
何故なら、国が定めた税を納めてさえいれば、好きなように領地を治める事が出来るからだ。
それでも王国の規則を守るのは、単に腐った欲深さの為なのだろう。
あまりにも広大な面積を誇る王国ならではの汚点とも言うべき問題だった。
「くそっ!」
フリックは壁を強く殴りつけた。
鈍い音と痛みが走り抜けていく。
「とにかく落ち着け。今は冷静になって時期を待つしかない」
そう言ったアキュアも、いつもより声の質が違う。
フリックと同じように、苛立ちを感じているのだ。
「王国の視察団でも見抜けなかった場所だぞ?」
「確かにそうだが……」
アキュアは言葉に詰まった。
何故、こうも簡単に捕まったのか。
アキュアは、ここに来てからの事を思い返した。
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