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「流石に大きいな」
眼前にそびえる城壁を見上げ、アキュアは呟く。
エラン率いる小隊は、オデッサ・ガロルが治めるガロル領の前に来ていた。
上流貴族の中で最大規模を誇る領地で、南側では海に面している。
その為、グラン王国では珍しい漁業が盛んな土地だった。
「先ほど使者を出しました。そろそろ戻って来る頃だと思うのですが」
先頭に立つエランが、難しい顔をしながらそう言った。
「待つしかないな。今ここで何か出来る訳ではない」
アキュアは腰を下ろすと、水筒の中の水を飲み込む。
生暖かくなった水だが、乾いた喉を潤してくれる。
「そう言えばフリックはどうした?」
気がつけばフリックの姿が見当たらない。
「後ろの兵達と何か話をされていましたよ。フリック殿と話をしたい者は多いですからね」
エランもそう言いながらアキュアの隣に腰を下ろす。
「こうしてアキュア将軍とご一緒出来る時が来ようとは、夢のようです」
「私は将軍ではないぞ」
エランの言葉にアキュアが微笑む。
「いえ、私にとっては将軍です」
そう言ったエランは、アキュアの目を見つめていた。
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