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「こちらでお待ち下さい」
豪華な調度品が居並ぶ部屋に通された3人は、案内人の言葉に黙って頷いた。
「オデッサ卿は民の声を良く聞くとの評判で、かなり人気があると聞いたが……」
王宮でも見られないような調度品を見ながら呟くアキュアに「人は贅沢しすぎると心が変わるものさ」と、フリックが言った。
「確かに心変わりはするだろうが……。それにしても、度が過ぎていないか?」
「屋敷に来る時に見た人々を見ただろ?あれは、圧制に苦しむ顔だ」
決して幸せには見えなかったガロル領の人々。
この地で一体何が起きているのか。
「すぐに分かるか」
アキュアはそう呟いた。
「お待たせいたしました」
正門から屋敷まで案内をしてくれた男が戻って来た。
深々と頭を下げ扉を開けている。
いよいよオデッサ・ガロルが姿を見せるのだ。
3人は、どこか緊張した面立ちで、部屋の入口に視線を向けている。
そして、すぐに割腹の良い男が入って来た。
「待たせてしまいましたかな」
低い声が、部屋の中に響いた。
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