裏切り

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「あなたがオデッサ・ガロル卿か。私はアキュア・クライン。こちらがフリック・バルモントで、エラン---」 アキュアの言葉を片手で遮るオデッサは「堅苦しい挨拶は止めましょう」と言った。 「あなたがアキュア・クラインである事は直ぐに分かりますぞ」 オデッサはそう言って怪しい目をする。 「噂以上の美しさですな。どうです?ワシの正妻にしてさしあげますが」 口元に笑みを浮かべながら言うオデッサ。 そのオデッサに「すまないが間に合っているのでな」と、軽く受け流すアキュア。 その言葉にオデッサは、一瞬だったが目を険しくした。 「まぁ、今の話は冗談です。気になさらないで下さい」 オデッサは頭を低くしながら手を叩いた。 すると、それが合図だったのか、数人の使用人がグラスを運んで来た。 「夕食には少し早いですからな」 使用人たちがグラスを配っていく。 そして、それぞれがグラスを手にすると「詳しい話は疲れを取ってからにしましょう」と言って、一気に飲み干す。 アキュアとフリックはお互いを目配せした後、グラスを口に運んでいった。
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