裏切り

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「あの飲み物に薬でも入っていたか」 アキュアは寝台の上で横になった。 初めから怪しいと思っていた。 フリックと目配せした時も、本当に飲むつもりでは無かったのだ。 それなのに2人共飲み込んでしまった。 つまり、あの部屋全体に何か仕掛けがあったのだ。 「考えても仕方ないが……」 考えなければならない。 自分達が牢に閉じ込められたのだ。 「そう言えばエランはどうした?」 さっきからフリックの声は聞こえて来る。 それなのに、エランの声は聞こえて来ない。 いや、気配を感じないのだ。 「他の牢にでも入れられたかもな」 「本気でそんな事言ってるのか?」 嘆息混じりにアキュアがそう言うと、フリックは何も言えなくなる。 「少し静かにしてくれんかの」 そんな2人の会話が途切れた時、暗闇の奥から老人のような声が聞こえた。 「ほぅ……話せる奴が居るのか」 フリックは声のした方を凝視した。 苛立ちで我を忘れていたが、ここには何人かの者達が居るようだった。 「ここの連中は無駄な体力を使わないようにしているだけじゃよ」 老人の声は、この暗闇の中で響いた。
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