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「確かに話すだけでも体力は使うけどな」
フリックの言葉に老人からの返事は無い。
「少し話がしたかったが……無理か……」
フリックは声のした方から視線を外すと、再び冷たい壁に背中を預けた。
この牢に入れられてから、どの位の時間が過ぎたのか分からない。
ただ、はっきりしている事は、オデッサの者が1人も来ないと言う事だ。
本来ならば、水や食事などが定期的に運ばれて来る。
「老人、聞かせてくれないか」
フリックは壁にもたれたまま声を掛けた。
「ここの食事はどうなっている?」
だが、返事は無い。
フリックが舌打ちをしようとした時「食事など与えられた事は無い」と老人が言った。
「何!?」
これにはアキュアも驚く。
「食事が運ばれないなら、お前たちはどうやって生きて来た?」
「床の水を舐めるんじゃよ」
「床の水だと?」
「そうじゃ。汚い水だが、生きる為だからのぅ。それに、水の中には虫が居る。それがご馳走じゃて」
「……」
アキュアとフリックは言葉が出て来なかった。
自分達が想像していた事よりも、遥かに酷かったのだ。
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