裏切り

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エランはフリックを見る事はしない。 その代わり、兵に牢の鍵を開けるように命令していた。 「女の腕を縛れ。少しでも怪しい動きを見せれば斬って構わん」 「エラン、貴様っ!」 「フリック殿、少し静かにされたらどうです?」 「どの口がそれを言う!?」 「あなたの大切なアキュア将軍は、オデッサ様に仕えるのだ。そう、あの少女のようにな」 エランは「連れて行け」と命じると、甲高い笑い声を上げながら去って行った。 「くそがぁぁぁっ!」 フリックは何度も格子を殴りつけた。 指の肉が裂け、白い骨が見える。 そこから血が吹き出し、床を赤く染めていく。 「ゆるさねぇ」 それでも格子を殴る事は止めなかった。 「だから言ったじゃろうに」 「黙れ!」 「あの女は一生、地獄を見る事になるのぅ」 「黙れと言っている」 「そのような口の聞き方をして良いのか?」 老人は「ふぉっふぉっふぉっ」と笑い続けていた。 そして老人が笑い終わると「ここから出たいのじゃろ?」と言った。
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