裏切り

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「これは推測ですが……」 シルはそこで言葉を濁す。 今ここで、自分の考えを口にするべきではない。 何故なら、このリリィーを信用出来るとは限らないからだ。 「もう1つ聞かせて下さい」 シルは途切れた言葉を飲み込み、別の事を聞く。 「これはリリィーにとって辛い事なのかもしれません。しかし、私は聞かなければならない」 その言葉にリリィーの肩がピクリと動いた。 震えているのだ。 恐らくシルが何を聞き出そうとしているのか分かったのだろう。 「あなたの手首にある焼き印の事です」 リリィーはやはりそうかと、シルから視線を外し俯いた。 「話せませんか?」 「い、いえ……」 リリィーは首を横に振ると、隣で心配そうに見つめている侍女を見た。 「大丈夫でございますよ」 侍女は優しく微笑むと、リリィーの頭を撫でた。 「この焼き印は奴隷の証しです。若い女の人は、その……あの……」 「領主オデッサの道具とされ、必要がなくなれば奴隷達の慰めものになる。そう言う事でしょう」 シルはハッキリとした口調で言った。
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