裏切り

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リリィーはシルの言葉に何も言えない。 ただ俯き、瞳から涙を流していた。 「辛い事を聞いてしまいました。この事には謝罪します」 シルはリリィーに向かって頭を下げていた。 まさか軍務卿と呼ばれる地位の人が、こんな自分に頭を下げるなどと誰が思うだろうか。 「彼女を神官の所へお願いします。私は女王に報告してきます」 侍女にそう言ったシルは立ち上がりながらそう言うと、後の事を侍女に任せて部屋から出て行った。 「では、神官様の所にご案内いたします」 シルの姿が見えなくなってから、まだ涙を流しているリリィーを立ち上がらせた。 「大丈夫ですよ。リリィー様は良く頑張られました」 侍女は優しく微笑む。 「あたしは何も……」 「いいえ。リリィー様の勇気こそが、シル様を動かしたのです」 リリィーには、この侍女が何を言っているのか理解出来なかった。 それでも、この侍女はシルが何をしようとしているのか分かっているのだろう。 「さぁ行きましょう。大丈夫です」 2人はお互いの手を取り合うと、大地教団の神殿へと向かって行った。
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