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「私を何処に連れて行く気だ?」
両手を後ろで縛られたアキュアは、数人の兵士に囲まれ槍を突きつけられていた。
その先頭で、エランはアキュアの言葉に耳を傾ける事なく前に進んでいた。
「まぁ行けば分かる事か」
限りなく絶望的なこの状況でも、アキュアには何故か余裕があるように見えた。
それは、いつでも逃げる事が出来るからなのか、それともエランが本気で裏切るとは思っていないからなのか。
「エラン、1つ言っておくぞ。このような事をして、生きていられると思うな」
アキュアは前を歩くエランに殺気を放った。
「アキュア将軍は何も分かっておられない」
ようやく口を開いたエランは、アキュアに向き直ると剣を抜いた。
「それで私を斬るか?」
アキュアから不気味な笑みが浮かぶ。
「私が将軍を斬ると思っておられるか」
エランはそう言いながら剣を振り上げた。
「私は将軍と共に歩みたかったのです。それなのに……あなたが……あなたが悪いのです!」
エランは叫んだ。
そして、振り上げた剣を一気に振り切る。
ヒュンっと風を斬る音と共に、アキュアの目の前を剣が通過した。
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