裏切り

16/47
前へ
/997ページ
次へ
-- 「私を何処に連れて行く気だ?」 両手を後ろで縛られたアキュアは、数人の兵士に囲まれ槍を突きつけられていた。 その先頭で、エランはアキュアの言葉に耳を傾ける事なく前に進んでいた。 「まぁ行けば分かる事か」 限りなく絶望的なこの状況でも、アキュアには何故か余裕があるように見えた。 それは、いつでも逃げる事が出来るからなのか、それともエランが本気で裏切るとは思っていないからなのか。 「エラン、1つ言っておくぞ。このような事をして、生きていられると思うな」 アキュアは前を歩くエランに殺気を放った。 「アキュア将軍は何も分かっておられない」 ようやく口を開いたエランは、アキュアに向き直ると剣を抜いた。 「それで私を斬るか?」 アキュアから不気味な笑みが浮かぶ。 「私が将軍を斬ると思っておられるか」 エランはそう言いながら剣を振り上げた。 「私は将軍と共に歩みたかったのです。それなのに……あなたが……あなたが悪いのです!」 エランは叫んだ。 そして、振り上げた剣を一気に振り切る。 ヒュンっと風を斬る音と共に、アキュアの目の前を剣が通過した。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加