予兆

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「所で何か用があったのかしら?」 「ですから、エラン将軍が間もなく到着されると申し上げました」 「そう……ありがと。下がっていいわ」 ミランは頭を下げ続けている若者にそう言うと、気付かれないように溜め息をこぼす。 正直な所、自分は女王の器ではないのだ。 「シルバ様……私では荷が重すぎます……」 ここに居ないシルバの名前を口にすると、再び深い溜め息を吐いた。 「少し疲れているようですね」 そんなミランに声を掛けた男は、王国式の敬礼をしていた。 「シルこそ、最近寝ていないように見えるわね」 最愛の夫であるシルが姿を現した事で、重苦しくなっていたミランの心が晴れていった。 それは彼女の顔を毎日見ているシルならば、すぐに気付く。 「王国軍を全て統括する軍務卿ですからね。何かと忙しいですよ」 シルはそう言いながらミランの頬に触れた。 「シルが倒れるような事があれば、私は--」 「大丈夫です。確かに小競り合いはありますが、心配するような事ではありません」 ミランの顔を引き寄せるシル。 その頬に軽く口付けをした。
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