裏切り

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エランがオデッサの元に居た時、アキュアは濡れた体に香を着けている所だった。 甘い香りが漂い、火照ったアキュアの体を更に美しく引き立てている。 「お前は自由になりたいか?」 アキュアは言葉を話す事の出来ない女に話し掛ける。 返事は期待していない。 ただ、その女は優しく微笑み頷いている。 「グラン王国では奴隷制度は禁止されている。この現状を知ってしまったからには、私は黙っている訳にはいかない」 アキュアの言葉を黙って聞く女は、コクリと頷く。 「これからオデッサに会うようなのでな。その時が奴の最後となる。そうなれば、お前も自由になれる」 アキュアのその言葉をどんな気持ちで聞いていたのだろう。 女は、何とも言い難い顔をして目に涙を浮かべていた。 「そんな顔をするな。とにかく、笑顔で見送ってくれ」 女は涙を拭うとコクリと頷き、笑顔を見せた。 「笑った顔の方が可愛いじゃないか」 そう言って立ち上がると、用意された服を手にした。 「趣味が悪いな」 絹で出来た1枚の羽織り。 袖を通しても、裸が透けて見えてしまう。 「まぁ今は我慢するさ」 そう言いながら、浴場の扉をアキュアは開けた。
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