裏切り

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「良く聞け!お前は許されない事をした。ここでお前が死んだ所で---っ!?」 その時アキュアは殺気を感じた。 オデッサから距離を取り、その殺気の主を目だけで探す。 だが、殺気を放った者は見当たらない。 「やはりお前は薬で言う事を聞かせる方がよさそうだ」 立ち上がるオデッサは、指を一度弾いた。 「お呼びでございましょうか」 「あの女に例の薬を」 「かしこまりました」 オデッサに呼ばれた男が、困惑するアキュアに一歩近付く。 「すぐ気持ち良くなりますよ」 小瓶を取り出しその蓋を開けると、アキュアに向かって投げつける。 「何のつもりだ?」 余裕でかわすアキュアの足下で、小瓶がパリンっと音を立てて割れた。 その割れた小瓶の中から、不思議な香りが漂い始める。 「この薬は中毒になりやすいですが、効き目は保証します」 男はそう言って笑う。 「この薬は便利でしてね。男には効かないのです」 そう話す男の顔が歪んでいった。 いや、アキュアの視界が歪み始めていたのだ。 「こ、この程度の事で……」 アキュアは一番近くの兵士に近付き、武器を奪い取った。 そして、自らの左腕を斬りつけた。
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