裏切り

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「くっ……」 凄まじい激痛がアキュアを襲った。 「面白い女だ」 男はアキュアを掴むと、強引に立ち上がらせた。 「な、何だ……?」 歪む視界の中で、アキュアは不適に笑う男の顔を見た。 「そ、そうか……貴様は……」 男の目は赤く光っていた。 だからと言って、今のアキュアに何かが出来る訳ではない。 浴場で助けると約束したものの、ここから逃げ出す事が出来るのかも怪しくなっていたのだ。 「何故、貴様たちが……」 アキュアはそれ以上話すのを止めた。 男の隙を着いたアキュアは、何とかその場から離れる事が出来たからだ。 「この男に死なれると面倒だ。誰か手当てを」 唖然としている兵士たちに言う男は「お前たちの仕事は何だ?」と付け加えた。 「し、しかし……」 兵士たちはお互いの顔を見つめ合いながら困惑する。 「使えぬ輩は必要ない」 男はそう言って兵士たちを睨んだ。 見たことの無い殺気。 それは兵士たちを震え上がらせてしまった。 「恐怖か……」 アキュアは意識が飛びそうになりながらもそう呟くと、その場から逃げようと動き出した。
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