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1人、また1人と命を落としていく兵士たち。
一方的な強さを見せるアキュアは、ついに最後の1人と対峙した。
「お前には借りがあったな……」
血にまみれたアキュアは、剣先を向けながらも動きを止めた。
「恨みは無い。だが、私の前に来るなら容赦はしない」
エランに殴られた時の事を思い出す。
あの時、優しく抱き寄せてくれた事がアキュアには嬉しかった。
それでも向かって来るならばそれは敵であり、情けをかける事は出来ない。
「自分は戦いたくありません」
その兵は剣を下げた。
「お前……」
「何かが間違っています。あなたなら、この状況を打開する事が出来ると信じます」
「くだらない感情に流されるか」
その時、男がゆっくりと近付いて来た。
「これだから人間は面倒くさいのだよ」
男の気質が変わっていく。
周りの空気がゆらゆらと揺れ始め、やがて渦に変わっていった。
そして、更に異変を感じた複数の兵士が近付いて来る。
「ここは下がった方がいい」
「それは無理ですな」
アキュアの言葉と同時に、エランが剣を構えて立っていた。
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