裏切り

29/47
前へ
/997ページ
次へ
1人、また1人と命を落としていく兵士たち。 一方的な強さを見せるアキュアは、ついに最後の1人と対峙した。 「お前には借りがあったな……」 血にまみれたアキュアは、剣先を向けながらも動きを止めた。 「恨みは無い。だが、私の前に来るなら容赦はしない」 エランに殴られた時の事を思い出す。 あの時、優しく抱き寄せてくれた事がアキュアには嬉しかった。 それでも向かって来るならばそれは敵であり、情けをかける事は出来ない。 「自分は戦いたくありません」 その兵は剣を下げた。 「お前……」 「何かが間違っています。あなたなら、この状況を打開する事が出来ると信じます」 「くだらない感情に流されるか」 その時、男がゆっくりと近付いて来た。 「これだから人間は面倒くさいのだよ」 男の気質が変わっていく。 周りの空気がゆらゆらと揺れ始め、やがて渦に変わっていった。 そして、更に異変を感じた複数の兵士が近付いて来る。 「ここは下がった方がいい」 「それは無理ですな」 アキュアの言葉と同時に、エランが剣を構えて立っていた。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加