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「名は?」
アキュアは囁く。
その囁きに「ジュリア・ブラッド」と名乗る。
「そ、そうか……。な、ならばジュリ……地下の……フリックを……たす……ろ……」
途絶えるアキュアの言葉に、ジュリアは「しかし……」と、戸惑いを見せた。
「このままでも息絶えるであろうが、将軍には楽に死んでもらいましょう」
アキュアに剣先を向けていたエランは、そう言って振り上げた。
「そこまでにしておけよ」
その時、後方から声が届く。
その声は怒りに満ち、その場に居た者たちを一瞬だが萎縮させた。
「フリック……か……」
一番聞きたかったその声に、アキュアは思わずフリックの名を呼んだ。
そして、それを最後に目の前が歪み、意識が遠のいていく。
「アキュア殿!?」
ジュリアは肩を揺すって叫ぶ。
だが、意識を失ったアキュアからは返事は無い。
「俺はこれ以上ない程に機嫌が悪い。お前たちが生きていられると思うなよ?」
アキュアを見たフリックは、凄まじいまでの殺気を放った。
「あの牢からどうやって……」
フリックの姿にエランも驚いている。
「お前に話す必要は無い」
フリックは、アキュアを囲む兵士たちに向かって飛び込んで行った。
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