裏切り

35/47
前へ
/997ページ
次へ
-- ガタガタと揺れる馬車の中で、フリックはアキュアを抱きかかえていた。 腕と足の傷は、一応の処置はしてある。 だが、意識を失ったアキュアの顔色は悪く、急いで神官に診せる必要があった。 「急いでデルララに向かってくれ」 馬車を操るジュリアに言うと「追っ手が来る可能性もある。お前たちは後方の見張りを怠るな」と命令した。 ガロル領から何とか逃げ出す事に成功したフリックたちだったが、まだ安心する事は出来ない。 「しかし驚きました」 1人の兵がそう言った。 「何がだ?」 「アキュア殿がこれだけの傷を負うとは、予想出来ませんでしたから」 「確かに予想外な事だったけどな」 エランにとどめのつもりで剣を振り上げた時、一瞬フリックの体が動かなかった。 その隙を着いたエランは、素早く退却して行った。 屋敷の護衛をしていた兵士たちが何名か向かって来ていたが、それはジュリアが片付けてくれた。 後はアキュアを連れて逃げる事だけを考えればよく、それほど難しい事では無かった。 そして、ガロル領に入る前に、1人の兵士に馬車の準備をさせておいた事は正解だった。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加