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ガタガタと揺れる馬車の中で、フリックはアキュアを抱きかかえていた。
腕と足の傷は、一応の処置はしてある。
だが、意識を失ったアキュアの顔色は悪く、急いで神官に診せる必要があった。
「急いでデルララに向かってくれ」
馬車を操るジュリアに言うと「追っ手が来る可能性もある。お前たちは後方の見張りを怠るな」と命令した。
ガロル領から何とか逃げ出す事に成功したフリックたちだったが、まだ安心する事は出来ない。
「しかし驚きました」
1人の兵がそう言った。
「何がだ?」
「アキュア殿がこれだけの傷を負うとは、予想出来ませんでしたから」
「確かに予想外な事だったけどな」
エランにとどめのつもりで剣を振り上げた時、一瞬フリックの体が動かなかった。
その隙を着いたエランは、素早く退却して行った。
屋敷の護衛をしていた兵士たちが何名か向かって来ていたが、それはジュリアが片付けてくれた。
後はアキュアを連れて逃げる事だけを考えればよく、それほど難しい事では無かった。
そして、ガロル領に入る前に、1人の兵士に馬車の準備をさせておいた事は正解だった。
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