裏切り

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その兵士は、何人かの信頼出来る者と手分けして馬車を準備してくれていた。 「馬車が無ければ、ガロル領から出る事は難しかったな」 フリックは思わず呟く。 その呟きが聞こえたのか「1つ聞いても宜しいでしょうか」とジュリアが声をかけて来る。 「何だ?」 「フリック殿が見せたあの不思議な力の事です」 「あれか……。あれは、この石を使ったんだ」 フリックは1つの石の欠片を手の上に乗せた。 特に変わった所も無い、普通の石のように見える。 「牢に閉じ込められていた時にな、親切な爺さんがくれたのさ」 「爺さんですか?」 「何でも、ガロル領では不思議な力を持つ石が掘れるらしい。あの牢の中に居た奴隷たちは、その石を掘っていたのさ」 「不思議な力を持つ石ですか……」 「分かり易く言えば魔石だな。何故、ガロル領で採れるのか知らないが、この石を指で弾くと---」 言いながらフリックは魔石を弾いた。 すると、屋敷で見たようにバチバチと火花が出始める。 「弾き方次第で強くも弱くもなるのさ」 「不思議ですね……」 「まぁな」 フリックは火花が治まるのを確認すると、大事に懐へと入れた。
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