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馬車はゆっくりと進んで行く。
ガロル領からの追撃も無く、ここまでは順調に来ていた。
未だアキュアの意識は戻らないが、容体は安定しているように見える。
「フリック殿、前方より馬車です」
前から来る馬車の灯りを見つけたジュリアがフリックに言った。
「あの馬車はデルララからですね。神官も一緒だと思います」
「そうか、向こうと接触してすぐに神官に診てもらう」
そう言ってフリックはアキュアを抱き上げた。
「お待たせしました」
1人の兵が馬車の扉を開けた。
その中から薄い白地の布をまとった神官が姿を現す。
「無理を言ってすまないな」
フリックは神官に頭を下げると「とんでもありません」と、神官は優しく微笑む。
「早速診させてもらいます」
馬車の椅子にアキュアを寝かすと、神官は両手を胸の前で組んで祈りを始めた。
「すみませんが、あなた方は外でお待ち下さい」
神官はフリックたちを見る事なく言うと、アキュアの羽織りに触れた。
「さぞ辛かったでしょう」
神官は両目を閉じると、精神を集中させた。
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