予兆

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-- 「なぁ、そろそろまともな料理を覚えたらどうだ?」 テーブルに並べられた皿に、真っ黒になった料理が盛りつけられていた。 本来なら香ばしさが漂う筈の料理も、見た目通りの焦げ臭さが部屋に充満している。 既に、素材が何であったのかも分からなくなっていた。 「うるさい!」 男に言われた事が頭に来たのか、料理が並べられたテーブルをバンっと叩いている。 「私の料理が食べれないなら、お前が作ればいいじゃないか!フリック、どうなんだ!?」 フリックと呼ばれた男は、額に手を当てながら溜め息を吐いた。 フリック・バルモント。 元グラン王国軍の将軍、アキュア・クラインの副官をしていた騎士だ。 サラサラとした真っ赤な髪を腰まで伸ばし、女らしい色気を一段と漂わせるアキュアと共に、2人で暮らしていた。 王国軍を辞めて2年近くになる。 誰からも慕われる存在で、常に先頭を行くその姿は、若い騎士達の憧れでもあった。 そのフリックは、今ではデルララの外れに家を買い、アキュアと幸せな時間を過ごしていた。
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