裏切り

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白い輝きが神官を包みだし、その輝きがアキュアへと流れていく。 温もりのある優しい輝き。 懐かしくもあり、心が安らいでいく。 意識を失っているアキュアですら、その輝きの温もりを感じているのかもしれない。 大地の恵み。 今、神官が使った魔石を媒体とする癒やしの技だった。 神官の命を使い、傷や病気を治すのだ。 大地の恵みを受けた者は、3日間の強制的な眠りに着く。 目覚めた時には、傷が癒えているのだ。 「不思議な力だ」 馬車の中から輝く光を見ながら、フリックは呟いた。 「自分は初めて見ましたが、何とも優しい輝きですね」 「心が綺麗な者しか使えないらしいからな。俺たちみたいな者は使えないさ」 「神官ですら滅多に使わないと聞いた事があります」 2人は大地の恵みが放つ光をただ見つめていた。 そして、その光が収縮していくと、馬車の扉が開いた。 「大丈夫か?」 命を削って使うだけあり、神官の疲労の色は濃い。 それでも「大丈夫です」と、気丈に振る舞う事所が、さすが神官なのだろう。 「彼女は何か魔石の粉を吸い込んでいますね」 フリックの顔を見た神官が、悲しい表情を見せていた。
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