裏切り

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「魔石の粉だと?」 「そうです。これは大地の恵みでも癒やす事は出来ません」 「その粉とは何か分かるのか?」 「残念ながら……。私も見た事の無い魔石と思われます」 見た事の無い魔石。 大地教団の神官がそう言うのだ。 何か新しい魔石が発見されたか、もしくは魔石の研究が進み、新しい効果のある物を作り上げたのか。 こればかりは、オデッサに直接聞かなければ分からない。 「そう言えば……」 その時、ジュリアが何かを思い出したのか、口を開いた。 「アキュア殿はオデッサ卿に剣を向けた時、見慣れない男が居ました」 「見慣れない男だと?」 ジュリアはオデッサの配下だった男だ。 そのジュリアが見慣れないと言ったのだ。 恐らく誰にも知られず、男を雇っていたのだろう。 そして、その男こそが、本当の黒幕なのかもしれない。 エランと戦っていたフリックは、その男を見ていない。 つまり、フリックが来た時には逃げ出した事になる。 「やはり復帰するしか無いな」 フリックは馬車の中で横になっているアキュアを見ながら、そう呟いていた。
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