予兆

6/37

1586人が本棚に入れています
本棚に追加
/997ページ
「仕方ないな……」 フリックは焦げた料理を片付けると、アキュアの代わりに料理を作り出した。 「同じ事を何度も言うが、焦げるまで何もしないアキュアが悪い」 「見ていろ」と、フリックは手際よく料理を作っていく。 「騎士にならなくても、お前なら職人として料亭で雇ってもらえそうだな」 料理を作るフリックを見ながら、アキュアは感心していた。 何故こうも何でもこなせるのか。 しかも、その姿が様になっているのだ。 「あのな……」 フリックは何か言葉を発しようとした。 だが、それが無駄な事だと知っているフリックは、再び溜め息を吐いただけで料理に集中する。 この2年近く、家事全般はフリックがやっていた。 アキュアも何度も挑戦するが、思うように出来ない。 洗濯をすれば衣類を破り、掃除をすれば物を壊す。 改めて、自分は剣しか能の無い女なのだと思い知らされていた。 「ま、焦る必要は無いさ。お前には俺の心を癒やす力がある。それだけで十分だ」 フリックはそう言いながら、出来上がった料理を皿に盛っていった。 さっきまでと違い、美味しそうな香りが部屋の中に充満していく。 その皿をフリックはテーブルに並べていった。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加