再開

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静かなホールに響くフリックの足音が、まるで泣いているように聞こえた。 表情には出さない。 アキュアの吸い込んだ魔石の粉は、間違い無く体を蝕んでいる。 それが何の魔石なのかが分からない。 今は女神像の前で祈る事しかフリックには出来なかった。 「俺たちは今まで人々の為に戦ってきた。だが、それは敵も同じ事が言えるだろう。それが罪なのだろうか……」 フリックには分からない。 それでも自分を信じ剣を握るだけなのだ。 「お悩みなのですね」 少女の透き通る声が響く。 気配を感じさせず、ここまで近付いて来たその声の主を見た。 薄い羽織りをまとっただけの神官が立っている。 「俺に気配を感じさせないとはな……」 「感じさせないのではなく、心に迷いがあるから気付かなかったのですよ」 穏やかに言う神官はフリックに微笑んだ。 「俺に迷いがあると?」 「心を静めれば、自ずと道が見えて来ます」 神官はフリックの手を取った。 温もりのある柔らかな感触に、フリックは心が休まる感じがした。 そして、自然と涙が零れ落ちて来る。 「俺は……」 フリックは力無く神官を見つめていた。
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