67人が本棚に入れています
本棚に追加
「え………?」
雑誌記者はポカーンとした顔で僕を見る。
うわ―
予想通りのリアクション………
「すみません
もう時間なんで」
微妙な間のあとマネージャーの坂時君が雑誌記者に言う。
「はっはい
ありがとうございました」
我に戻った雑誌記者は失礼しますと言ってそそくさと控え室を出て行く。
「み~ず~きさーん」
眼鏡をかけ直し目線を僕に合わせて言う。
「なんだい?
坂時君」
「今回何の取材だったか覚えてますか?」
「映画」
「どんな話か分かってますよね?」
「桜を愛する作家の青年と桜の精との純愛物だね」
ちなみに僕が演じたのは桜を愛する作家だ
「だったら
なんであんなこと言うんですかっ
嘘でもなんでも言って上手く立ち回って下さいよっ」
「ファンに嘘をつけってか?」
「嘘も方便です
だいたいテレビで普段から猫かぶってるあなたが言う言葉ですか?
それ」
「誰だって猫かぶってるもんだろ?
でも別にいいだろう?
演じてる僕が桜を好きだろうが嫌いだろうが
それにむしろ話題になるかもよ?
『桜嫌いの瑞季司演じる桜を愛する作家美山和希』それはそれで面白い」
「それも一理あるかもしれませんが……」
坂時君は何にとなく納得いかないというのがありありと顔に出ている。
前から思っていたが分かり易いやつだ。
最初のコメントを投稿しよう!