変わらぬ日常―櫻―

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「そう言えば逢坂さんやめるそうです」 坂時君は車を運転しながら言う。 「逢坂さん? え……と誰だっけ」 「何が誰だっけですかっ あなたの家政婦さんでしょ」 「あぁ」 あの五十過ぎのおばさんか……… 「旦那さんの転勤に付いて行くそうです しかし残念です…… 逢坂さんなかなか長続きしてたのに実に惜しい」 「そうだな 確か半年くらいだったような」 大概は長くて1ヶ月だったからな 思い返して見れば長かった 窓から流れゆく景色を眺めて思う。 「せっかく 安定したと思ったのに また家政婦さん探しか……… 厄介な仕事が増えたな」 眉間にシワを寄せしっかり前を向き一人愚痴る。 「厄介だと思うんならそんなことしなくていい 必要ないし」 僕は欠伸をしながら言う。 「必要ですよっ 瑞季さんは仕事以外はかなり適当なんですからっ 特に食生活が酷い コンビニでなんか買って食べるのはまだマシな方……… 食べる物が家になければ何も食べないという適当ぷり 俳優は体が資本だと言うのに……」 坂時君は深い溜め息をつく。 「おまけに瑞季さん自由人だし、人の言うことはあまり聞かない 半年間文句を言わず頑張ってくれた逢坂さんの名前すら覚えてないし そんなだから雇ってもみんな長続きしない 人選もミーハーを雇うわけにはいかないからなかなか進まない……… 全く~ 百歩譲ってせめて大人しくして下さいよ」 途中から懇願になっている坂時君の小言にウンザリする。
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