導き

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俺はいつまでも空を見つめ、泣いていた・・・ それは、俺にとって永久にも感じられる時間だった。 悲しかったから。すべてを失ったあの日からの生活は、あまりにも苦しくて・・・。 俺の鳴き声が聞こえたのだろうか。気がつくと、ドアをノックしている人がいる。 誰だろう・・・・加奈だろうか? 「誰だ・・・?」 「兄さん・・・私。どうか・・した?」 「加奈・・・。いや、なんでもないよ。」 「お姉さんのこと?」 「・・・・おやすみ。加奈。」 「そうなんだね・・・。元気出してね。兄さん。おやすみ。」 加奈は部屋へと戻っていった。 俺はほんとは兄さんと呼ばれるべきではないのかも知れない。 加奈にはほんとは・・・兄さんではなく、「雄樹」と呼ばれるべきなのかもしれない。 だが、そんなことを考える俺が、情けなくて。 俺は・・・加奈に姉さんを重ね合わせているのだろうか。 だとしたら俺は・・・最低だ。 兄貴だなんて、名乗る資格はないかもな・・・。 ・・・・・まぶしい。 「兄さん、起きてよー。」 「加奈・・・。俺は眠いんだ。どっかいっててくれ。」 「そんな事いわないで・・・。私が困っちゃうよお。」 「うるさいな。俺は眠いんだ・・・。」 後・・・10分。いや5分でいい。 寝させてくれ。 「・・・ほー。いい度胸してんじゃない?雄樹くん。」 この声は・・・ 「加奈ちゃん困らせるとは、私が許さないよ?5秒以内に起きなさい。さもないと・・・」 「わー!ストップストップ!」 そこに立っていたのは包丁を持った花梨の姿。 こいつなら・・・やりかねん。 朝っぱらからこんな起こされ方して・・・ 大丈夫か。俺の精神状態。 「まったく。おねぼうさんなんだから。さあ、早く準備して、学校いくよ。」 そんなこんなでまた今日が始まるんだな。俺は毎日が始まることに感謝をしている。 なぜなら、支えてくれる仲間がいるから。 姉さん、俺は立派に生きているよ。だから・・・心配しないでね。
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