導き

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「ただいまー。」 「あら、お帰りなさい。雄樹さん。」 美沙さんはちょうどご飯の準備をしてる真っ只中だった。 「大変そうすね。俺も何か手伝いましょうか?」 「あらあら、大丈夫ですよ。お部屋でゆっくり休んでてくださいな。」 俺はベッドに寝転んだ。特に眠たかったわけでもないんだけど。 橋で出会ったあの少女のことを、思い出していた。 なんだか、不思議な感覚だった。今まで俺はこんな感覚を味わったことなんてなかった。 なんだろう・・・胸が高鳴るというか、気持ちが高揚するというか・・・・。 まぁ今は忘れるべきなんだろう。 どれくらいたったかわからない。あたりはすっかり暗くなって。 俺はベッドから起き上がり、窓の外を見上げていた。 夜・・・星や月が光り輝き、窓ガラスには俺の顔が映り・・まるで空に俺が浮いてるかの様な。 そんな感覚を俺は味わったことはない。 なんだか、幻想的な、とてもきれいな。 だから・・・何だかうれしくなってきて。 俺は気がついたら、少し涙が出てきていた。 嬉し涙。なんだか、不思議と、とまらなくって。 星達や月の輝きが、俺にとってはあの日忘れた・・・姉さんの温もりみたいに感じられて。 うれしくて、うれしくて。でも、切なくて、儚くて。 涙が止まらなかった。いつの間にか俺は涙を流すんじゃなくて、泣いていた。 「う、うぅぅぅ・・・姉さん。何で死んじゃったんだよぉお。」 俺の心の奥で、あの日の思い出が出てくる。 記憶の奥底に埋め込んだはずの、俺がすべてを失った日の記憶。 その記憶の中には、俺の笑顔が詰まっていた。 そして最後には・・・俺の泣き顔が、詰まっていた・・・
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