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昔、課題に出された文集がきっかけで仲良くなった藤原と俺。
といっても、俺がバンド仲間に勧誘したからのようなものだけれど。
横でハモニカを吹いている藤原を見ながら、あの頃のこいつに思いを馳せる。
極度に目を見られるのを嫌がったこいつ。
"人に嫌われる目をしているから"
何度否定しても、受け入れてくれなかった。
「なに、なんか吹く?」
ずっと見詰めていた俺に気付いた藤原が、微笑いながらこちらを見る。
「いや..」
数年経った今でも、彼のその切れ長な瞳を隠し続ける前髪を、右手で掻き上げた。
「..なに」
ふふ、と笑いながら軽く身じろぎする彼を見て、少し安心した。
傷は、癒されたのかと。
目が悪い人間にとって、物を集中して見るときに目を細めるのは、仕方のないことだ。
でも、それは他人からすれば、ただ睨んでいる様にしか見えない時もあって。
理不尽かもしれないけれど、それも仕方のないことで。
「綺麗な目..」
「..ふふ、秀ちゃんだけだべ。んなこと言うの」
「んなことねーだろ」
いつの間にか吹くのを止められた赤いハモニカが、藤原の細長い指で弄ばれる。
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