4人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、彼の目が好きだ。
切れ長で、常に遠くを見ている様な、全てを吸い込む様な、深い色をして。それでいて、とても優しい瞳。
彼は、その目が未だに、余り好きではないみたいだけれど。
「なぁ、今度さ、新曲聴いて欲しいんだけど」
「ぉー当然じゃん。聴かせてよ」
ふふ、と、唇が笑みを形作る。優しく目が細められて..。
いつからか、彼には友情以上の感情を抱いていた。
ライブで疲れて座り込んでしまった時も、持病の蕁麻疹が発症して辛そうにしている時も。
嬉しそうに笑っている時も、メンバーとバカな話して笑い合ってる時も。
いつも、彼だけを見てきた。
ギターを弾いて歌う彼の後ろから、辛そうに背中を丸める彼を遠くから、笑っている彼の隣から。
一挙一動が、愛しくて堪らない。
彼の嫌う、その瞳さえも。
「藤原..」
「んー?なに?」
「...いや..」
ずっと、見てきたから。
伝えられない。
きっと、小学校の時に、彼の出した文集を見た時から、彼に惹かれていたのだと思う。
勇気を出して、誘って良かった。
彼が、唄うことが好きで良かった。
いつか、いつの日か。
藤原に俺の想いを伝えられる日が来たなら。
彼のガラスの様な心を映し出す、綺麗な瞳を真っ直ぐに見据えて、伝えようと思う。
「好きだよ」と、想いを込めて。
BGM:ガラスのブルース
了
最初のコメントを投稿しよう!