始まりの唄 - Dr→Vo

3/3
前へ
/9ページ
次へ
俺は、彼の目が好きだ。 切れ長で、常に遠くを見ている様な、全てを吸い込む様な、深い色をして。それでいて、とても優しい瞳。 彼は、その目が未だに、余り好きではないみたいだけれど。 「なぁ、今度さ、新曲聴いて欲しいんだけど」 「ぉー当然じゃん。聴かせてよ」 ふふ、と、唇が笑みを形作る。優しく目が細められて..。 いつからか、彼には友情以上の感情を抱いていた。 ライブで疲れて座り込んでしまった時も、持病の蕁麻疹が発症して辛そうにしている時も。 嬉しそうに笑っている時も、メンバーとバカな話して笑い合ってる時も。 いつも、彼だけを見てきた。 ギターを弾いて歌う彼の後ろから、辛そうに背中を丸める彼を遠くから、笑っている彼の隣から。 一挙一動が、愛しくて堪らない。 彼の嫌う、その瞳さえも。 「藤原..」 「んー?なに?」 「...いや..」 ずっと、見てきたから。 伝えられない。 きっと、小学校の時に、彼の出した文集を見た時から、彼に惹かれていたのだと思う。 勇気を出して、誘って良かった。 彼が、唄うことが好きで良かった。 いつか、いつの日か。 藤原に俺の想いを伝えられる日が来たなら。 彼のガラスの様な心を映し出す、綺麗な瞳を真っ直ぐに見据えて、伝えようと思う。 「好きだよ」と、想いを込めて。 BGM:ガラスのブルース 了
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加