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昔々、あるところに。 死を招く鬼が生まれたそうな。 屍の骸のような銀の髪、血を写したような緋色の瞳── はてさて、人の世に生まれし哀れな童は、今いずこ? 「屍を喰らう鬼、ですか?」 会合の帰りに寄った茶屋の主人の話に、眉を顰める。 「向こうのお山の方でね。屍溢れる地には、数多の烏を従えし白き鬼が現れ、横たわる屍の死肉を歯み、血を啜って笑うのだと。..怖い話があるもんだねぇ...」 本当ですね、と先程とは一転して穏やかに微笑んで茶を飲み干し、お金を置いて立ち上がった。 「あぁ、お侍さん!..鬼退治なんぞ、考えんでくだせぇよ」 「...なぜです?」 淡い色彩の、長く美しい髪を靡かせ、侍は首を傾げる。 「いやね、その鬼に会った者は、未だ誰一人として帰って来た者はいねぇって話だ」 悪いこたぁ言わねぇ、無益に命を危険に晒すもんじゃあねぇよ── 「此処、ですか..鬼の住む山というのは...」 鬱蒼と木の茂る山。 そこは確かに、異様な雰囲気を纏っていて。 思わず男は息を飲んだ。 「成る程確かに..何やら化けて出そうですねぇ...」 腰の刀に軽く手を添え、息を吐くと、彼は山へ登って行った。
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