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生き物の気配の、全く感じられない場所を歩き続けていると、血の臭いが漂ってきて。
刀を持ち直し、もう一度歩き出す。
「..っあれは...?!」
“鬼退治”をしに来た者達だろうか。
侍と思われる者達が血を流し、折り重なって倒れ。
烏が我が物顔でその上空を旋回し、死肉を啄んでいる。
そして、深く暗い色ばかりのその場所で、一際目を引き付ける色。
輝く銀色の──
「...童..?」
歳は六つ程であろうか。
痩せ細り、顔色も悪い、変わった容姿のその少年は。倒れる屍から握り飯を探り、その躯の上に腰を掛けて、食べ始めた。
屍の懐にあった、血の付いた握り飯。
生きている人間の、ましてやこのように年端もいかぬ子供が食べるには、余りにも粗末で。
──この童の、どこが鬼だというのだ?
この子はただ、今この瞬間を必死に生きようとしているだけではないか?
哀れで健気なこの童を、救える者はなかったのか?
..否。
“救おうと思う者”だ。
無心に握り飯を頬張る彼に、思わず足が動いていて。
くるくると跳ねる銀の髪に、手を置いた。
「──屍を喰らう鬼がいると聞いて来てみれば...君が、そう?」
続
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