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驚いた様に男の手を払い、警戒心を隠そうともせず刀を向けてくる少年に、男は微笑み、口を開く。
「...それも、屍から剥ぎ取ったんですか?」
「童一人で屍の身ぐるみを剥ぎ、そうして自分を守ってきたんですか?」
「大したもんじゃないですか」
先程感じた言葉をそのまま少年に伝えると、紅い瞳を瞬かせ、訝し気にこちらを窺ってくる。
この少年は、敵意しか感じ慣れていない──
そう感じた時、無性にこの少年を愛しく思い。
腰の刀に手を掛けていた。
「だけど..そんな剣、もう要りませんよ」
──無論、斬る為ではなく
「人に怯え、自分を護る為だけに振るう剣なんて、捨てちゃいなさい」
──この子を救う為に
「くれてあげますよ、私の剣。そいつの本当の使い方を知りたきゃ、ついて来るといい」
投げられた刀をきょとんと見詰める少年に、また微笑んで。
選択をさせる為に、背を向けて歩き出した。
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