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「俺の髪が真っ白で、目が赤いから、いくさが起きたんだっ..て..」 今まで言われてきたのであろう言葉を、淡々と思い出すように述べていく少年に、耐えきれなくなって。 松陽は少年を抱き締める。 そして、陽の光を浴びて輝く銀髪に指を絡め、哀しそうに微笑んだ。 「では..私があなたの名前を決めても、良いですか?」 その言葉に首を傾げた少年が、視線をさ迷わせてゆるゆると頷くのを見て。少し考えるように空を見上げ、絡めた銀糸を梳きながら、そうですね、と小さく呟く。 「..時を忘れる程に美しい銀の髪..」 「あなたがその時を過ごす度に、その色を好きになれますように...」 「“銀時”..とは、どうでしょう?」 気に入りませんかねぇ、と覗き込む男に、銀色の頭が横に揺れる。 「...っあり..がとう...っ」 生誕したその瞬間に鬼子と呼ばれて。 身よりを無くして鬼と呼ばれたその少年に、松陽の言った名前の由来は、あまり理解は出来なかったけれど。 慈しむように見詰められ、優しい声で「人」としての名を与えてくれた男に、酷く安心感を覚えていた。 「...銀時」 「..っはい」 緊張したように、それでも嬉しそうに返事をする“銀時”の頭を撫で、微笑う。 「..私を、あなたの父と、思ってはくれませんか..?」 「...ぇ..?」 まるで、鉱石を磨いたように美しい瞳だ。 そう思いながら、松陽は言葉を続ける。 「銀時を護りたいのです。...あなたが傷付くのは、見たくない」 そう告げた松陽をきょとんと見た後、嬉しそうに頷いた。 続
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