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「うっ……」
小さく呻くと、リアはゆっくりと身体を起こした。
まだはっきりしない意識の中で、部屋の中を見回す。
室内はパソコン、机、壁にいたるまで全てがズタズタにされていた。
「痛っ……」
身体中が痛い。
見ると、頭と脇腹から多量の出血があり、白衣の下に着たブラウスは真っ赤に染まっていた。
内臓も傷付いているらしく、一呼吸する度に身体中が悲鳴を上げるのが分かる。
「はぁ……はぁっ……っ……はぁ……」
立ち上がろうとしても身体が上手く動かせず、リアは仕方なく床の上を這って壁際までたどり着くと、壁に身体を預けて何とか立ち上がった。
「はぁっ! はぁ……はぁ……」
ただそれだけなのに、酷い疲労感が全身を襲って立っていられなくなってしまう。
始まりはほんの数時間前だ。
武装した謎の集団が、この研究所にやって来てここで研究・開発している機体を全て渡せと言って来た。
研究主任であるリアがそれは出来ないと言うと、連中はいきなり発砲して来たのだ。
警備員や研究員達は、おそらく誰一人生きてはいないだろう。
結果、せめて研究成果だけは守ろうとこの地下ブロックに直行した彼女だけが、こうして何とか生き永らえた訳だ。
とは言え、途中で見つかって銃撃を浴びせられた際に脇腹を撃たれ、転んだ拍子に頭を強く打って今まで意識を失っていたのだが……
傷の程度は軽くない……いや、どう贔屓目に見てもかなりの重傷である。
頭からの出血は止まって来ているが、頭を打ったせいでまだ意識は少しだけ朦朧としているし、脇腹を抜けた銃弾が内臓を傷付けたらしく呼吸もままならず、先程から出血も一向に止まる気配が無い。
すぐに処置をしなければ命に関わる状況だが、この施設の医療設備が生きているかは微妙だし何よりも医務室まで身体が保つとは到底思えなかった。
「それにしても、酷いわね……。この状況でこの怪我……さすがにマズいかな……」
しかし、まだやらなければならない事が残っている。
ここに残された研究成果を、誰にも触れられない様に細工をしなければならない。
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