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「ただいま~」
「おかえり、アニス。どうだった?」
アニスが自宅マンションに帰ると、黒髪をポニーテールにした女性が出迎えてくれた。
「エリシア。相変わらず機械いじり? それともパソコン?」
髪を簡単に纏めて上下繋ぎの作業服という出立ちの同居人に、アニスは半眼でそんな事を言う。
「あら、アニスだって部屋の中はまるっきりガンマニアそのものじゃないの」
「あのねぇ! あたしのは趣味と実益を兼ねてるからいいのよ! エリシアなんか、そのメカオタクが今まで役に立った事あった?」
「まぁ良いじゃないの。それより、今回の依頼はどうだったの? 請けたんでしょ」
先程の言い合いなど無かったかの様に話題を転換させられて、アニスは呆れるしかない。
「はぁ……まぁ良いわ。紅茶にする?」
「コーヒーでお願い。アメリカンでね」
「はいはい」
エリシアの注文通り、アニスはキッチンに向かうとコーヒーメーカーを取り出して湯を沸かし始める。
二人暮らしを始めて二ヵ月ほどになるが、基本的に口に入る物は全てアニスが準備する様にしている。
これまでエリシアが何度か台所に立った時は、そのいずれもが何やら得体の知れない物が食卓に並ぶハメになった為、それからはエリシアの父親でありアニスにとっては育ての父であるデニスがいる時でさえ、エリシアには台所への立ち入りを禁止させているのだ。
「エリシアー。そう言えば今日はオジさんは?」
「今日は自宅に直帰だから寄れそうに無いって。それよりそろそろ嘘でもパパって呼んであげたら? 父さん、きっと喜ぶわよ」
「アハハ、考えとくわ」
冗談めかしたエリシアの言葉に苦笑まじりにそれだけ答えると、アニスは沸騰した熱湯をコーヒーメーカーに注いでその間に二人分のカップに砂糖とミルクを用意する。
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