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「はい、ブラックね」
「ありがとう。アニスは相変わらずカフェオレ?」
コーヒーカップ二つをテーブルに持って行くと、早速エリシアがそんな事を言う。
「しょうがないでしょ。何も入れないと苦くて飲めないんだから」
「だったら紅茶にすればいいじゃない」
口を尖らせて言ったアニスに、エリシアが苦笑する。
「いいのよ。丁度コーヒーが飲みたい気分なの」
「まぁ良いけどね」
意地を張ってコーヒーに口を付けるアニスを呆れながら見つめるエリシア。
その視線に気付いて、アニスは横に置いていた地図をテーブルの上に広げる。
「仕事の内容はコンピュータのデータディスクの回収。場所はここね」
「海辺の研究所跡地か。あれ? ここ……」
「どうかした?」
意外な反応にアニスも首を傾げる。
「確か半年位前に研究していたアンドロイドの起動実験中に、機体が一斉に暴走したとかで廃墟になった研究所じゃないかしら。それでアンドロイド研究の第一人者だった女性科学者を始め、研究員や警備員までが全滅して封鎖されたらしいけど」
「ふ~ん」
「ふ~んって、せめて新聞くらい読みなさいよ。あの時は結構ニュースにも取り上げられていた筈よ」
「そうだっけ?」
「そうよ。こういう仕事なんだから、時世には目を光らせておいた方がいいわよ」
そう言って再び地図に視線を落とすエリシア。
「ここなら車を使えばすぐね」
「うん。危険も少ないだろうし、軽装備で大丈夫そうね」
「ところでアニス」
「え?」
アニスが顔を上げると、エリシアの黒み掛かったグレーの瞳がまっすぐこちらを見ていた。
髪の色もそうだが、瞳の色もアメリカ人としてはありえない色である。
昔聞いてみたところ、母親は日本人でエリシアを産んだ数年後に体調を崩して亡くなってしまったのだそうだ。
おそらくエリシアは母親似なのだろう。
確かにこうして見ると日本人に見えなくもない。
「ちょっとアニス。ちゃんと聞いてるの?」
「あ、ゴメン。なんだっけ?」
久し振りに間近でエリシアの顔を見たせいか、見惚れてしまっていた様だ。
(仕方ないよね。エリシアって義妹のあたしから見てもキレイだし)
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