1人が本棚に入れています
本棚に追加
アニスがそんな事を考えていると、エリシアは一つ大きく溜め息を吐く。
「ちゃんと聞きなさいよ。取り敢えず場所が場所だから、無断でちょこっと入ってデータを持って来るだけなら何の問題も無いはずよ」
「そうね。何かあったらその時ってことで♪」
「調査も一通り終わってるはずだから、何も無いとは思うけどね。と言うか、無い事を祈るわ……」
異様に楽しそうな返事をするアニスに、エリシアが苦笑する。
「ところでアニス」
「? 何よ、いきなり改まって」
「本当に良かったの? アニスの事情は分かってるつもりだけど、ハイスクールまで卒業してからでも遅くないと思うわ」
その言葉に、アニスは苦笑しつつかぶりを振る。
「ゴメン。でも、あの事故の時にお兄ちゃんはあたしのすぐ側にいた。だから、もし今もお兄ちゃんがどこかで生きてるなら、どんな形でも良い……一目だけでも会いたいの」
「アニス……」
アニスがエリシアと一緒に暮らす様になったのは、10年前の空港で起きた事故がきっかけだった。
エリシアが当時事故の捜査に当たっていた父から聞いた話では、旅客機が運転を誤って空港の建物に激突し、ロビーが破壊され100人を越える死傷者が出るという大事故だったらしい。
アニスは一人きりで通路の隅で泣いていた所をデニスに保護され、事故で身寄りの無くなってしまった彼女はデニスに養子として迎えられた。
アニスが助かったのは兄に付き添ってもらってトイレに行っていたお陰で、運が良かったとしか言い様がなかった。
「………………」
当時を思い出してか、時折暗い表情で話すアニスをエリシアは優しげな視線で見つめていた。
「進学を薦めてくれたオジさんには悪いとは思ってる。でも、今のあたしには他には何も無いから」
「分かったわ。まぁ、私もあなたがこんなことを始めるって言い出した時に協力しちゃったしね。とことん付き合ってあげる」
軽くウインクして見せるエリシア。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「やめてよ。私の事は呼び捨てで良いのよ」
アニスの言葉にエリシアは突然真っ赤になってしまう。
昔からアニスにお姉ちゃんと呼ばれる事に妙な抵抗があるらしく、この一言を聞くと照れの為か恥ずかしいのか顔を真っ赤にするのだ。
最初のコメントを投稿しよう!