亜稀

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2-14 ある日、なんとなく亜稀が店に来る前に店に来てみた。 丁度、新人達が開店準備をしている脇で総太さんが二人の面接をしていた。 オレは暇だったのでPCを起動させて店のサイトをチェック。 メールの整理をしていると亜稀が事務所に入ってきた。 「はよ~、あれ、啓吾早ぇじゃん」 「おはよ。なんとなく来てみた」 「珍し… つか、もう面接の奴来てんのな。 一服してから行こ」 そう言って椅子に座った亜稀は、何時もと違う市販のライターで煙草に火を点けた。 「あれ?Zippoは?」 「ん?あー、どっかに忘れてきたっぽくて、なくてさぁ…」 「え?勿体な。 高かったんじゃなかったっけ?」 「そー!初任給でさぁ、兄貴とお揃で作ってもらったやつ!」 「え?兄貴とお揃? それ初耳だけど」 「あれ?そう? 兄貴にはホント世話になってるからさぁ、お礼的な?」 「兄貴に? 普通親に‥とかよく聞くけど?」 「勿論、親にも渡したよ。 母さんにネックレスで、親父に時計」 「お~、流石。 つか、それ一服したらどっか行くって?どこに?」 「え?面接に」 「は?今総太さんがやってる奴等?」 「そー。面接から見て採用不採用決めるからさ」 「マジで‥? 面倒くさくね?お前面倒くさがりじゃ…」 「面倒くさがりだけど、これは全然。 自分で選んで教えた奴が、しっかり働いてくれて客とれる様になってくれるのは嬉しいじゃん」 亜稀は満足そうに笑って言いながら短くなった煙草を灰皿でもみ消した。 なんか、コイツって…
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