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2-15
「さてと、んじゃ行って…」
「お、居た、亜稀」
言葉を返す事が出来ないまま亜稀に視線を向けていると、亜稀が立ち上がったと同時に雅貴が事務所に入って来た。
「あ、はよ~」
「はよ。亜稀、昨日家にライター忘れてっただろ?」
雅貴が言った言葉に、一瞬で胸が苦しくなった。
必然的に連想させる、そういう直接的なセリフ、他の奴から聞きたくなかったのに…
「あ!やっぱり!
良かったー…サンキュー!」
「どーいたしまして」
亜稀は嬉しそうに言って雅貴からライターを受け取ると、軽くライターを持ち上げ一瞬会釈して事務所を出て行った。
すげーイライラする。
どうしたらいいのか解らないくらい腹が立つ。
亜稀が居なくなってオレと雅貴の間には少しの間沈黙が続き、僅かに聞こえてきたフロアで流しているBGMが妙に騒がしく感じた。
雅貴に声を掛ける気も起きず、PCの画面に視線を戻すと、さっきまで亜稀が座っていた椅子に雅貴が腰掛けた音が聞こえた。
「男の嫉妬は見苦しいぞ?」
雅貴の半ば苦笑混じりの言葉がオレに向けられた。
「悪いかよ。
すげー腹立つ」
「お前直ぐ態度に出るからな」
雅貴の方は一切見なかったけど、口調から笑われている事は解った。
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