亜稀

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2-1 「アイツ、総太さんがごり押ししてるらしいんっスよ」 何時もの様に開店から少し遅れて同伴して店に行くと、何時もとは違った賑わいを見せていた店内。 後輩にどうしたのかと尋ねると、見慣れない綺麗な顔をした金髪の男を指差してそう言った。 その男は“亜稀”と言って、オレがそいつを初めて見掛けた3日程前に入店したらしい。 オレが所属している店『SkyAir』は、関東の各所にチェーン店もあり、10年程前まで人気ホストだった総太さんが現在はオーナーを勤めている。 この店は、総太さんがオーナーになる随分前からあって、ホストクラブではかなり老舗の超有名店。 オレはそこで1年弱の間No.3を継続させている、店の幹部の一人。 他の幹部二人は、No.1争いをここ2年程繰り広げている、翔と雅貴。 翔は2年連続でホストグランプリを制覇していて、雑誌モデルもやってる有名ホスト。 雅貴は翔が入店して客が定着するまで不動のNo.1だった、こちらも有名ホスト。 翔と雅貴売れ方は他を寄せ付けないモノで、同じ幹部なのに二人は相当仲が悪かった。 仕事の話も、翔と雅貴の間にオレや総太さんが入らなければ出来ない程に… そんな状態だったこの店に、突然現れた業界未経験の美形男。 亜稀は入店初日から凄かった。 …と、後になって他のホストから聞いた。 初日にいきなり一人でキャッチに出たかと思えば、1時間足らずで5組つかまえて店に戻り、初日からヘルプに着く間もなく、本指と場内のみで終了。 2日目と3日目はキャッチには行かせず、ヘルプにつかせていたが、直ぐに場内が入る始末。
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