亜稀Ⅶ

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陽が登ってきた頃病室でテレビを点けたら、俺がストーカー被害に遭ったニュースがやっていた。 色んな局でなかなか大々的にやってくれていて、なんだか他人事の様に「へー…」なんて言いながらチャンネルを変えていると、鴨下さんの局のテレビのアナウンサーが 「この度は亜稀さん並びに関係者の皆様に、当局の行動で多大なご迷惑をお掛けし、まことに申し訳ございませんでした」 と謝っていた。 「…またいきなり…つか今更?」 「今更つか… お前が人集りに謝って、サイトで文章upしてから局に非難が集中したって噂で聞いたけど…」 「昨日テレビの取材が店周りに結構来てさ、そん時に鴨下さんの局のお偉いさんもうちに謝りに来たぞ。 ストーカーの奴が、テレビで亜稀を知って…って言ってたみてぇだし」 「マジか…」 「マジで。妙な事にはなったけど… 鴨下さん絡みはもう大丈夫だろ」 確かに… これでまだ何か言ってくる様なら鴨下さんの人間性を本当に疑う。 外来の受け付けが始まってから、保険無しで一泊分の入院費を払って病院を出た。 亜稀で入院してんのに、千里の保険証は出せない。 保険無しだとこんな高いんだなぁ… 若干痛い出費… 取り敢えず家に帰らなきゃ… 宿のない涼聖は夕方まで翔の家で寝るらしい。 自宅に帰る為タクシーに乗って、何となく携帯を開くと、兄貴から鬼の様に電話が掛かってきていた。 時間的には朝からだし… ニュース見たのか… もう兄貴は仕事に行ってるだろうからメールで『大丈夫。これから帰る』と送った。 心配してくれたんだろうなぁ… こりゃ次まともに顔合わせた時絶対怒られるな… それを想像して思わず苦笑い。
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