亜稀Ⅶ

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吉祥寺に着いてタクシーを降り、そこから家まで徒歩で帰った。 何ともないハズだけど、歩いてみると少しクラクラする… 変な薬が抜けきれてないのか? 今日仕事行っても酒は控えよう… そんな事を考えながら自宅の玄関を開けると、直ぐに兄貴がリビングの方から走ってきた。 あれ? 仕事は… 「千里っ!」 俺が声を掛ける間もなく、俺は何故か兄貴に抱き締められた。 な…何!? 「…兄貴?」 「良かった…無事で… …無茶ばっかして…お前死んだらどーするんだよ…っ」 初めて兄貴の涙声を聞いて、どう返事をしたらいいのか解らなくなった… “心配してくれた”なんて軽い物じゃない。 本当に滅茶苦茶心配掛けた… …そーじゃん… この人とはリアルに兄弟なんだ。 俺が兄貴の立場でもきっと泣く… でも、今は釣られて泣いたりなんかしない。 亜稀は泣いてる場合じゃない。 「心配掛けてごめん… ごめんな…でも、もう大丈夫だから…」 「大丈夫大丈夫言ってて、昨日みたいに大丈夫じゃない事だってあるだろっ!?」 やっぱり、結局怒られる。 でも怒ってくれるのが嬉しい。 それでもやっぱり、もう大丈夫なんだよ。 気を付けなきゃいけない事はよく解った。 兄貴を落ち着かせて家の中へ入ると、幼馴染みの兄さん達も家に来てた事に気が付いた。 みんなニュースを見て心配して来てくれたらしい。 でもそれ以上に兄貴が心配し過ぎてて、出て行くタイミングを逃したと… こんなに心配してくれる人が居て、世話やいてくれる人達が居て… 俺って恵まれてるんだな… 改めてそう実感しながら、夕方まで寝る事にした。
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