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その夜、カインはあの占い師の言葉が気になって寝付けなかった。
「外行こ…。」
同じテントで眠る仲間を蹴らないよう、起こさないように細心の注意を払いながら、テントの外へ出た。
乾いた夜風がすり抜けていく。
足元くらい余裕で照らす強い光を放つ満月。
散歩をするには、丁度良い夜だった。
月光に照らされて煌めく月光草を見つけた。
淡い桜色の花の中心に、透明な玉状の蜜を貯めてキラキラと輝かせていた。
「イーリスとルイスの好きな花…。」
一輪に手を触れると、花は熱を感じて閉じてしまった。
太陽の光を浴びて枯れる儚い花。
カインは萎えてしまった一輪を摘み取ると、強く抱き締めた。
それを、ルイスやイーリスに見立てて。
そして、カインは泥水の底を舐めることとなる。
エルネスト将軍率いる軍隊が攻め込んできたのだ。
カインは弓を引き絞り、「動く甲冑」目掛けて矢を放つ。
倒れる甲冑。
さ迷う軍馬。
現れた黒馬。
跨がる英雄。
金色に輝く髪、精悍な顔立ち、鋭い視線。
その男こそ、エルネスト将軍。
将軍は不敵な笑みを浮かべ、カイン達を纏めるリーダーではなく、カインを目指して進撃を開始した。
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次章へ続く。
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