第一話…孤児達の行き場

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とある小さな街にエルネスト孤児院という孤児院がある。 そこの家主こそ、ルイス・エルネスト。 孤児達の親のような存在であり、同時に教師のような存在でもある。 ルイスは、毎日夕暮れ時になると決まって出掛けて行った。 行き先は皆が知っていた。 誰も賛成していないが、孤児達には反対するだけの力もなかった。 「ルイス、今日も行くの?」 「晩御飯までには帰ります。いい子で待っててくださいね、イーリス。」 ルイスはイーリスという、一番ルイスに懐いているであろう少年の頭を優しく撫で、お決まりの柔らかい微笑みを向けて家を出た。 ルイスの後ろ姿をずっと見送るイーリスの肩に、慣れた風に手が置かれた。 「入ろう。今晩は冷えるから。」 「…うん。」 イーリスは鼻声だった。 イーリスは孤児ではなく、捨て子だからか、ルイスが出掛ける度に見送りに出る。 また捨てられるという思いもあるのだろう。 「大丈夫、ルイスは絶対帰って来るから!ここ以外に帰る場所なんてないだろ?な?」 イーリスは黙って頷いた。 この世話焼きな少年はカイン。 イーリスの兄のような存在で、孤児内で最もイーリスを可愛がる人物。 「…本当に帰ってくるかな…。」 「何言ってんだよ。それより、昨日の話の続き!風呂場のネズミどうなったんだ?」 カインは暗い話題を嫌う。 暗い話題が上がれば、すぐにコミカルな話題を見つけて切り替えようとする。 カインは両親からの虐待に耐えきれず、自分から孤児院へ逃げて来た子だった。 無理にでも笑顔を作る様はただ痛々しいだけであったが、確実にイーリスには希望を与えていた。 こうした傷の舐め合いは、エルネスト孤児院では当たり前だった。 ルイスが毎日出掛けるようになってから…。 深夜1時―――― 大丈夫と断言した本人が、ルイスの帰りが遅くて眠れていなかった。 同じベッドを使っているイーリスが寝ぼけて擦り寄ってきた。 イーリスの頭を撫でてやり、目を擦ってもう一度時計を見る。 何度見ても同じ。 「…大丈夫…ルイスはきっと帰ってくる…。」 一人呟くと、イーリスの肩まで布団を掛けて、ゆっくり目を閉じた。 .
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