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翌朝、ルイス・エルネストの遺体が、森の奥で発見された。
死因は窒息死。
体に付いていた後から、何かで強く締め上げて殺害されたと考えるのが普通だが、やる気のない憲兵は適当に自殺で片付け、足早に酒場へと消えて行った。
国にとってはなんてことない事件。
孤児院の子供達にとっては、天変地異にも似た大事件。
「カイン…俺達…どうなるんだろ…?」
「解らないけど、絶対俺から離れちゃダメだ!いいな?」
「うん!」
カインとイーリスは固く手を繋ぎ合い、カインの提案により、残された子供達の引き取り手探しを始めた。
結果、誰も引き取られなかった。
…前言撤回。イーリスを含め、半数以上が国の兵士として引き取られた。
イーリスとカインは引き裂かれた。
「必ず生きて会おう!信じてるからな!」
カインの叫びは、確かにイーリスに届き、イーリスは返答として握りこぶしを高く掲げた。
カインは孤児達を連れたまま、差し押さえられた孤児院を追い出された。
帰る場所を失い、泣きわめく子供達をあやすのに精一杯で、カインの身に迫る影など気付く由もなかった。
「うわぁっ!?」
「小僧、この街に詳しいか?」
カインを捉えた男、胸に菱形。
間違いなく、数年前から戦争をやり合う敵国の国旗を模した紋章。
「は…放せ!放せよ!!」
「質問に答えろ。」
「知るかよ!孤児院から遠くまで出たことなんてねぇんだ!」
「…いい面構えだ。気に入った。おい、連れて行け。」
顎で指示を下す男。
連行されるカイン。
カインの背後には不安と恐怖に震える子供達。
カインとイーリスが引き裂かれてから、再び出会うこともなく冷酷に時は流れ
16年という長い歳月が過ぎ去ったのだった。
次章に続く。
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