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そう、夏の日。
ただぼーっと水面を見ていると一つの笹船のような物が流れて来た。
僕はそれを拾いあげてみる。
「あ」
すぐ後ろから聞こえる声に多少驚きながら振り返ってみる。
「よくできてるでしょ」
女の子だった。僕と同じくらいの歳かな。ストレートの黒髪にキャスケットをかぶり、パステルカラーのスカートをヒラヒラさせていて思わず見とれてしまう程可愛かった。
「よくできてる。君が作ったの?」
少し目をそらしながら聞き返す。
「うん、自信作」
彼女は会心の笑顔。
しかし見た事ない顔だった。
この町の高校は遠くから来る者も少なく、なんとなく近場や地域の中学からそのまま上がってくるような所なのに。
「君はこの町に住んでいるの?」
「ううん、ずっと遠くの町に住んでるの。今は旅してるっていうのがいいかも」
「旅ねぇ…親御さんは大丈夫なの?」
「夏休みが終わるまでは親戚の家を渡り歩くって言っておいたから大丈夫だよ」
なんていい加減なんだ…。
そもそもそれで納得する親もどうかと思うぞ。
「ウチの親は放任主義だからさ、きっと一人暮らしするって言っても止めないと思う」
「こ、心を読めるのか?」
「大丈夫、誰だってそう思うよ」
まったくそんな親がいたもんなんだねぇ。
「で、旅人の君は今どこに向かっているんだい?」
「アテはないかな、本当に親戚がいるわけでもなし」
「じゃぁ少し僕の家で休憩していく?冷たい麦茶くらいは出すよ」
「本当?よかったー歩き疲れて参ってたところだよ」
そして家に歩き始めた。
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