一章

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 そこには朝も昼も夜もない。  青と紫が綺麗に混ざった無垢で汚れた世界。  ほとんどが草木で構成された本来静かな場所は、しかし今ざわざわと騒がしかった。  その騒がしさは楽しさや喜びのような明るいものではなく、恐怖によるもの。  出たよでたよ、とそれぞれが口にするのは『神殺し』という名前。  黒い翼を持った少女が白い翼を持つものや『神』を片っ端から襲っているのはまだ記憶に新しい。  青と紫の空を従えるこの世界は人ではない者が暮らす世界。  俗に言う『天使』や『神』が暮らす場所。  静かなその世界の住人が怯えているのが『神殺し』と言う名の少女。  誰もが近寄らない『暗い場所』から生まれた異質な暗闇は天使たちを襲う。 「銘だ」 「神殺しの銘が出た!」  ここ最近は耳にたこが出来るほどその話題で持ちきりだった。
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