序章

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 昼夜問わずにその場所は暗かった。  足場が悪く鬱蒼としている木々は暗さのせいでより一層気味悪く映る。  その場所は山と称するべきか森と称するべきかははっきりしないが日も当たらない地面や空気はじとじととしていて居心地が悪い。  悪魔でさえも近寄らないようなそこは「異質」なもので、そこに住んでいる者以外は誰も入ってこない。  そんな異質な場所の奥の奥、深緑の茨を抜けた更に奥に小さな泉があった。  泉は暗く、底が見えずに静かにそこにある。  暗く、小さな泉を見るためのようにある大人一人が腰掛けられるような、苔の生えた岩。  青く、如何にも座り心地の悪そうな岩に一人、少年が座っていた。  クリーム色の衣服が汚れるのにも関わらず、白髪の少年はじっと苔のついた岩に座り泉を見ていた。  体の大きさの割に幼い顔つきの少年はその黒い瞳を泉からそらすことはない。
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