序章

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 暗いこの場所に呼応するように真っ黒な少年は幼い子ども独特の大きな黒い瞳を嫌そうに細めた。  この暗い、月の加護もなく、日も当たらない場所の住人の黒い少年は、同時にこの場所を補佐する者。  全身に黒を纏う少年には名はないらしく、白い少年は彼を呼ぶ手だてを持たない。  岩から腰をあげることなく白い少年は困ったように笑った。 「ごめんね、でも僕は待っていたいんだ」 「頼まれてもないのに?」 「君だってそうだろ?」 「…だけど天使」 「違うよ」  違うよ、と黒い少年の言葉を白い少年は遮った。  その遮った時のその声音が予想以上に大きくて、黒い少年は虚を突かれたように大きな瞳を更に大きく見開いた。  白い少年は普段大きな声をだすような性格じゃない。  白い少年の比較的大きな声でまわりに影響が出る訳じゃないが、黒い少年はぬかるんだ地を踏む力が僅かに強まった。
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